自立サポートセンターゼロイチ
センター長 成田 智弘
とある専門学校の福祉科にて、通年の非常勤講師を行っております。担当している科目は、
カウンセリングです。
このクラスの講義が、9月の始めで全て終了しました。前年度を合わせると、このクラスの生徒さんとは60時間程の時間を共にしました。
私が担当しているこの授業では、知識を詰め込む(頭を使う)事が中心ではなく、生徒さんが感情(気持ち)を表出することができる雰囲気・環境になる事を大切にしています。
そのため、私が教壇に立つ事はしません。私も生徒さんと一緒に机をつなげた輪の中に入って一緒に、「聴き合い」・「伝え合い」に参加しています。
生徒のみなさんが、日々感じている気持ち等を語ってもらい、その内容を心理の理論に繋げていく体験型の授業にしています。
最後の授業では、私が作成している羊毛フェルトの猫を使って、「自分を表現する練習」を行いました。
① たくさん居る猫の中から、気になる猫ちゃんを2匹選んでもらいます。
② その猫を選んだ気持ち(無意識を意識化)を言葉にしてもらいます。
③ 猫を並べて、2匹の猫同士に会話をしてもらいます。
④ 2匹の猫が会話をしているやりとりの言葉を、紙に文字で書いてもらいます。
⑤ 最後に、それぞれが書いた猫同士のやり取りを発表してもらいます。
⑥ 聞いている側は、発表者の言葉を否定や評価を加えずにそのまま受け止めます。
※もちろん、講師の私も、生徒さんと一緒に同じ作業を行います。

何人かの生徒さんから、作業の途中で「私の表現ってまちがっているんじゃない」とか、
「自分だけみんなと違う様な表現しちゃってダメだったんじゃないか」などの言葉が挙がっていました。
みんなが書いたものを発表してもらうと、
羊毛フェルトの猫を通して、生徒さんそれぞれの気持ちが表現されました。
どの表現(言葉)も、たった今のその生徒さんそれぞれの状態が出ているという印象でした。
私は、生徒さんそれぞれの表現を、そのまま聴かせてもらいまいました。
「自分の表現でいいんだよ」
「人と違うという事が尊いことなんだよ」
「あなたはあなたのままで大丈夫だよ」
等の言葉を相手に届ける事は、自分を肯定していける様になる人間関係の工程で大切です。しかし、それ以上に大切なのは、人と人とのやりとり(関係)を通して「あなたはあなたのままで大丈夫」を体験していくことにあると感じています。
そのため、私は生徒さんの言葉をあるがままに受け止めます。評価・否定もしません。評価や否定されていないというこちらの空気は、相手(生徒さん)に伝わっていきます。その体験を通して、生徒さんの中に「あぁ、私は私でいいんだなぁ・・・」という感覚が残ります。これが、体験を通して感じた快の感情です。
快の感情を体験すると、その事は良い事という枠組みが出来上がります。枠組みが出来上がると、人は枠組みに合わせた行動を取っていきますので、この体験で、次の場面でも、生徒さんは自分を表現できる部分が増えていきます。
そんな工程を、意図的に持っていく授業展開をしてきた60時間でした。
生徒のみなさんが、穏やか・純粋な眼差しでこちらを見てくれていた様に感じます。そのおかげで、毎回、学校に講義に行く事に楽しみを感じる事ができていました。
後期はどんな生徒さんたちに出会えるだろうか・・・