自立サポートセンター ゼロイチ
センター長 成田
私はこれまでの仕事で、主に精神障害を持っている方々やそのご家族と接する機会が多くありました。精神科病院から提供される治療は、薬物療法の他にも精神科リハビリ等様々な方向性から対象となる患者さんの状態に合うものが医師の指示により行われます。
私が精神科病院に勤務していた頃は、精神科訪問看護で退院した後の患者さんのお宅を看護師と共に訪問したり、精神科デイケアで通院患者さんと共にスポーツや話し合いを行う等精神科リハビリの場面を経験しました。
その様な様々な治療を経て、患者さんが地域で自分らしい生活を送っていける事に繋がっていくイメージがあります。
しかし、服薬その他の治療を患者さん自身が拒否してしまう場合もあります。精神科の主治医が必要と判断して提供する治療が患者さんの拒否により行われない状態が続くと、感情のコントロールが出来なくなり本来のその方が行わない様な行動を起こす事があります。
例を挙げると、他者への暴言・暴力、物を壊す、付きまとい、卑猥な言動など他者が迷惑する様な行為など様々な形で現れます。そんな時、家族や友人など今までその患者さんと関係が深い存在の方々でも、その患者さんとの接し方がわからなくなってしまいます。そうなると、その患者さんの傍から人が自然に居なくなっていくという状態を見る事があります。
その後、入院治療など適切な治療に繋がっていくと、正常な状態を取り戻した患者さんから「あの時の自分は本来の自分ではなかった」などという言葉が聞かれる事があります。
その様な経過を辿る多くの患者さんに出会う事で、私は人間の切なさの様なものを感じます。病状が悪化している時の患者さんは、本来の自分を失いつつある様に感じます。その患者さんの本来の姿を知らない人たちの多くは「あの人怖い・・異常だ」など、病状が悪い時の患者さんの姿だけで負の評価を下します。場合によっては、複雑な心境を持ちながら親や友人でさえも、「もうあの子(あいつ)とは関わりたくありません」などと宣言されてしまう場面にも立ち会ってきました。
私自身も、精神症状が悪化した状態の患者さんと接していて暴言・罵倒・物を投げられるなどの行為を受けると、心が疲弊して患者さんに対して負の感情を抱く場面があります。ただ、そんな時に立ち返って思う様にしているのは「これは、患者さん自身じゃなくて、病気が患者さんに言わせて・させていることなんだ」というものです。危険を感じる時は当然その患者さんから離れますが、気持ちは患者さんと繋がっていたいという思いで現在も仕事に当たっています。